枝元なほみ 伊藤比呂美対談「食と食育、そこから文学」の感想2

番頭です。手代Y隊員が〈枝元なほみ 伊藤比呂美対談「食と食育、そこから文学」〉の感想を寄せてくれましたので、掲載します。

「基本は食」。枝元さんが何度も言われる言葉に、思い出す光景があった。臨終間際の祖母が集中治療室で急に意識がシャンとしたように枕もとの私に言った。「あのなあ、トンハルのな、とんかつを皆に買うてきてやって。○ちゃんに○ちゃん、それから○君の嫁さんに…えーと」。子や孫やひ孫の名を数え上げるがどうしても全部出てこない。するとまた「あのな、トンハルのな、とんかつを」と幾度も幾度も繰り返していた。ああ、今トンハルのとんかつに対する情熱だけが祖母とこの世を結びつけているんだ、食物ってすごいんだ、と強く心に残った光景。
むかごの未来について語りやまない枝元先生。ねばねば食物のトゥルンとヌルズルンの違いについて、熱くやり取りされるお二人。その食に対する大きな愛を、私は尊敬と羨望のまなざしでただただ見つめていた。
熊本に来てから、ずっと感じていること。湧き出る水に、雨に、草木に、心が打ち震える不思議な感動。その感動の正体を熊本文学隊はいつも私に示してくれる。(手代Y)