助手による受講生のための予習メモ(8月) その2

舞踏会


明治の頃、とある家の令嬢明子は、生まれて初めての舞踏会に出席するため、鹿鳴館に出掛けます。
美しく咲き乱れる菊の花、爽やかな香水の匂、婦人たちのレエスや花や象牙の扇…
その雰囲気に劣らず美しい明子は、仏蘭西の海軍将校に誘われ、ワルツを踊り、ポルカを踊り、マズュルカを踊ります。
ともにアイスクリイムを食べて、庭園の上の星月夜を眺めて…
時代は変わって大正。
明子は汽車の中で、青年小説家に会います。
彼が編棚の上に置いた菊の花束を見た明子は、思い出すことがある、と鹿鳴館の舞踏会の話をします。
その海軍将校の名前を聞いて興奮する小説家。
しかし明子は、おかしな言葉をつぶやきます…
まるでそこで空気がガラリと変わってしまうかのような、最後の明子の言葉。
明子はなぜ、最後の最後にそんな言葉をつぶやいたのか。
おかしいのは明子か、作者芥川か。
あなたはどう感じましたか?


初出:「新潮」1920(大正9)年1月