きぬえの「本は読みよう」第1回
- 作者: 伊藤比呂美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2008/09/20
- メディア: 単行本
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内容だって一本筋がとおってますから、気持ちがいいんです。深いんです。「あたしはあたし、という生の基本」を思春期や、男との縁や、子育てや、親の介護やらの荒波にゆられ揺られ、実践してきた「あたし」。女しかやったことのない「あたし」が、血気盛んでうっとうしかった思春期をはるか後にして、血も渇き容色廃る閉経期に来たとき、さあどう向き合う。「おれァおまえの山姥みたいなとこが好きなんだから」とのたまう良き夫がいて、かくして「正々堂々とあたしのままで」いることに。女は自らの正体だった「山姥」に帰っていくんですね。大庭みな子の『山姥の微笑』も顔負けです。「しろみ」版山姥説話のオチを読んでください。私は、声をたてずに号泣しました。ハイ、女は「絶望」してません。
(谷口絹枝)